死、マルチバース、そして「やり直し」の恋。このSFラブストーリーが切なすぎる
「もしも、あの日に戻れたら…」
誰もが一度は心に思い浮かべる「やり直し」の願望。ですが、もしその「やり直し」が、あなたの知っている世界とは“少しだけ違う”世界線で始まるとしたら、あなたはどうしますか?
最近、映画や小説で「マルチバース」という言葉をよく耳にしますが、本日ご紹介する漫画『マルチバースの私、恋していいですか?』(作者:いちき先生)は、その流行のテーマを使いながらも、一線を画す奥深さを持った、まさに「読むべき」一作です。
本作は「ラブストーリー」や「ラブコメ」と紹介されていますが、その実態は単純な青春の物語ではありません。なぜなら、この物語の始まりは、主人公の「死」そのものだからです。
そして、その死から始まる「やり直し」は、難解な「量子力学」の香りさえ漂う緻密な「ミステリー」でもあります。命を懸けて守った「君」とは違う、「マルチバースの君」との間で揺れ動く、「切ない」感情の葛藤。
この記事では、なぜ本作が単なるSFラブコメではないのか、その衝撃的な導入部と、読者の心を掴んで離さない奥深い魅力について、徹底的にご紹介します。
一目でわかる!「マルチバースの私、恋していいですか?」作品情報
まずは本作の基本的な情報を表でご紹介します。読み始める前の参考にしてくださいね。
| 項目 | 内容 |
| 作品名 | マルチバースの私、恋していいですか? |
| 作者 | いちき |
| 出版社 | KADOKAWA |
| 連載媒体 | 月刊ドラゴンエイジ, ドラゴンコミックスエイジ, ドラドラしゃーぷ# など |
| ジャンル | 少年マンガ, ラブストーリー, SF, ラブコメ |
その「死」は、終わりではなく始まりだった – 本作の概要
本作は、「もしも」の世界を描くSF設定と、王道の「ラブストーリー」を掛け合わせた、新感覚の物語です。
主人公・城後もみじは、想いを寄せる相手・宮都すいを守るために命を落としてしまいます。あまりにも切ない幕切れ。しかし、その「死」は終わりではありませんでした。
「君はやり直せる」という謎の声に導かれ、もみじが意識を取り戻した先は、悲劇が回避された世界。しかし、そこには決定的な「違い」がありました。もみじを救ったのは、自分が知っている「すい」とは“同じだけど何かが違う”、別の世界線から来た「宮都すい」だったのです。
本作の概要は、「一度死んだ主人公が、愛する人の“マルチバース(並行世界)”の存在と出会い、奇妙な同居生活の中で、新たな恋と過去の後悔に向き合っていく」物語、と言えるでしょう。
絶望から始まる「やり直し」の恋 – 衝撃のあらすじ
読者の心を鷲掴みにする物語の導入部分(第1話)のあらすじを、もう少し詳しくご紹介します。
主人公の城後もみじは、ある日の放課後、ずっと片想いをしている宮都すいと一緒に下校するという幸運に恵まれます。「その運の良さにほっこりしていた」もみじでしたが、その直後、日常は絶望へと暗転します。
暴走するトラックが二人に迫る。もみじは、愛するすいを守るため、彼女を突き飛ばし、自らが犠牲となる道を選びます。確実に死んだと思われた、その不運のさなか、もみじは不思議な声を聞きます。
「君はやり直せる。 だから次は後悔しないようにね。」
次の瞬間、もみじは目を覚まします。トラックの悲劇は回避されていました。しかし、自分を助けてくれた少女は、先ほど自分が命を懸けて守った宮都すいとは、明らかに何かが違いました。
彼女こそ、別の世界線から「その悲劇を回避するためにふいに現れた」宮都すい。こうして、もみじは「マルチバースの彼女」と、不思議な同居生活を始めることになるのです。
なぜ私たちはこの物語に惹かれるのか? 3つの主要な魅力
本作が単なる「SFラブコメ」という枠に収まらない理由、その核心的な魅力を3つのポイントで徹底解剖します。
「SF×切なさ」の化学反応:ただのラブコメではない物語性
本作の最大の魅力は、SF設定が恋愛感情の「切なさ」を最大化する装置として完璧に機能している点です。
もみじの恋心は、元々「オリジナル(元の世界)の宮都すい」に向けられたものでした。彼女のために、もみじは命を捨てたのです。しかし、今目の前にいるのは、同じ顔、同じ名前を持ちながらも、厳密には「別人」である「マルチバースのすい」です。
もみじが「マルチバースのすい」と親しくなればなるほど、胸をよぎるのは「自分はオリジナルのすいを裏切っているのではないか?」という罪悪感や、「オリジナルのすいは今、どうしているのか?」という拭いきれない喪失感。
この、「新しい恋のときめき」と「過去の恋への哀悼」が同時に存在するということこそが、本作の「切ない」魅力の源泉です。
「同じだけど、違う君」との同居生活がもたらす葛藤
「同居」はラブコメの王道設定ですが、本作ではそれが「ドキドキハラハラ」の緊張感を生む最大の要因となっています。
なぜなら、もみじは「オリジナルのすい」の記憶を持ったまま、「マルチバースのすい」と日常を共にするからです。ふとした仕草や言葉尻に「オリジナルのすい」との違いを見つけては戸惑い、逆にそっくりな部分を見つけては胸を痛める。
「マルチバースのすい」は、もみじにとって「死んだはずの初恋の相手の幻影」であり、同時に「自分を死から救ってくれた恩人」、そして「新たな恋の相手」という、何重にも複雑な存在です。この逃げ場のない「同居」生活が、読者に絶え間ない緊張感と、二人の関係性への強い没入感を与えます。
知的好奇心を刺激する、緻密なミステリー要素
本作を一味も二味も違うものにしているのが、その知的なミステリー要素です。
ある読者レビューでは、「オカルト?SF?ミステリー? って言うか、理論物理学で量子力学で、マルチバースで、確立の波を観測した!」と評されています。これは、本作が単なるファンタジーではなく、SF的な理屈(ロジック)に裏打ちされた世界観を持とうとしている証拠です。
- もみじに「やり直せる」と語りかけた謎の声の正体は?
- なぜ「マルチバースのすい」は、もみじを助けに来たのか?
- 「オリジナルのすい」がいた世界線は一体どうなったのか?
これらの謎が物語の縦軸となり、「読み終えたらなんか賢くなった気がした」とまで言わしめる、知的好奇心を満たす「ミステリー仕立てのエキサイティングなラブストーリー」として、読者を強く引き込みます。
読み始めたら止まらない!序盤の注目ポイントと名言
物語の序盤から、本作の魅力が凝縮されたシーンが満載です。特に注目してほしいポイントと、本作のテーマを象徴する名言をご紹介します。
注目シーン①:幸福の絶頂から死へ(第1話)
「好きな子と一緒に帰る」という、ありふれた、しかし主人公にとっては最高の幸福。その「ほっこりしていた」瞬間から、一転して暴走トラックに巻き込まれ、「自分は死んでしまう」という絶望への落差。この第1話の鮮烈な「死」の描写こそが、本作のラブストーリーに「切なさ」という確固たる背骨を与えています。
注目シーン②:「君は誰?」 – 2人の“すい”
悲劇を回避し、目を覚ましたもみじ。しかし、自分を救ってくれた「すい」は、自分が命懸けで守った「すい」とは“違う”ことを瞬時に悟ります。「助かった」という安堵よりも、「何が起こったのか」という混乱と、「目の前の君は、私の好きな君じゃない」という根源的な問い。この「邂逅」シーンが、本作の複雑な人間関係の幕あけを告げます。
心に残る名言:「君はやり直せる。だから次は後悔しないようにね。」
死のさなか、もみじが聞くこの謎の声。これが本作のすべてを貫くテーマです。もみじの「後悔」とは、単に死んでしまったことでしょうか? それとも、想いを伝えられなかったことでしょうか? そして、「後悔しない」ための「やり直し」とは、果たして「マルチバースのすい」と恋に落ちることなのでしょうか? この問いかけこそが、物語の最大の推進力です。
運命が交差する世界の中心人物たち
本作の複雑で切ない物語を織りなす、主要なキャラクターたちをご紹介します。
城後もみじ(しろご もみじ):想い人を守り、一度「死んだ」主人公
宮都すいのことが好きな女子高校生。すいを交通事故から守り、一度は命を落とします。しかし謎の声によって「やり直し」の機会を得て、「マルチバースのすい」に救われます。元の世界への後悔と、目の前の「すい」への新たな感情の間で揺れ動きます。
宮都すい(みやこ すい)[マルチバース]:別の世界線から「悲劇を回避するために」現れたヒロイン
もみじが死ぬはずだった悲劇を回避するため、別の世界線から現れた「すい」。もみじを救った後、なぜか彼女と不思議な同居生活を始めることになります。オリジナルとは「同じだけど何かが違う」存在であり、物語の最大の鍵を握るミステリアスな少女です。
宮都すい(みやこ すい)[オリジナル]:もみじが恋し、命を懸けて救った、本来の想い人
もみじが片想いをしていた、元の世界線の少女。もみじの自己犠牲によってトラックの悲劇からは救われました。彼女が存在する世界線がどうなったのかは、本作の大きな謎の一つです。
もっと知りたい!「マルチバースの私」徹底Q&A
さらに深く本作を知りたい方のために、気になる疑問点をQ&A形式でまとめました。
Q1: 原作は小説やゲームですか?
A: いいえ、本作は「いちき」先生によるオリジナルの漫画作品です。KADOKAWAのコミックウォーカーなどの情報によれば、本作の連載版の他に「読切版」も存在しているようです。読切版が好評を博して、満を持して本連載に至った期待の新作であることがうかがえます。
Q2: どんな読者におすすめですか?
A: まず、SF設定の効いたラブストーリーが好きな方には強くおすすめします。さらに、単なるハッピーエンドのラブコメではなく、「切ない」物語や、胸が締め付けられるような葛藤を描いた作品が好きな方にも最適です。また、レビューにもある通り、「ミステリー」や「量子力学」といった知的好奇心を刺激する要素が好きな方にも、新しい読書体験として刺さるはずです。
Q3: 作者「いちき」先生の過去の作品には何がありますか?
A: 提供された資料の範囲内では、いちき先生はKADOKAWA(ドラゴンエイジ)において、本作『マルチバースの私、恋していいですか?』の「連載版」と「読切版」の2作品がクレジットされています。このことから、本作が先生の(少なくとも同レーベルにおける)代表作であり、現在最も注目すべき作家のお一人であると言えます。
Q4: 「少年マンガ」とありますが、もしかして「百合」作品ですか?
A: 非常に鋭いご質問です。本作は「月刊ドラゴンエイジ」や「ドラドラしゃーぷ#」といった媒体で連載されており、ジャンルは「少年マンガ」に分類されています。
しかし、あらすじの通り、主人公(もみじ)が想いを寄せる相手は「宮都すい」という少女です。また、作品タグには「女子高校生(JK)」も含まれています。
これらの情報から、本作は「少年マンガ誌で連載される、少女同士の切実な恋愛(百合)を描いたSF作品」である可能性が極めて高いです。昨今のジャンルの多様化を象徴するような、非常に注目度の高い作品と言えるでしょう。
Q5: どこで読めますか?
A: 本作はKADOKAWAの複数のプラットフォームで読むことが可能です。「月刊ドラゴンエイジ」での雑誌連載に加え、Web漫画サイトの「カドコミ(コミックウォーカー)」や、「ニコニコ漫画」内の「ドラドラしゃーぷ#」、「ゼブラック」などでも配信されています(※分冊版の場合もあります)。
さいごに:もし、運命をやり直せるなら――あなたはどうしますか?
『マルチバースの私、恋していいですか?』は、「マルチバース」という壮大なSF設定を舞台にしながらも、その核心で描いているのは「後悔」と「やり直し」という、非常にパーソナルで普遍的なテーマです。
主人公のもみじは、「後悔しないようにね」という言葉と共に、二度目のチャンスを与えられました。しかし、そのチャンスは、愛した人そのものではなく、「愛した人によく似た、別の人」との出会いという、あまりにも切ない形でもたらされます。
もし、あなたが「やり直し」を願うとして、その世界があなたの記憶と少しだけズレていたら?
あなたは過去の喪失を受け入れ、目の前の「今」を愛することができるでしょうか。
本作は、単なるラブストーリーを超え、私たちの「選択」と「運命」に深く問いを投げかける作品です。「作品紹介で得た印象とはまったく違う読中感・読後感」を、ぜひあなたご自身の目でお確かめください。


