欲と情『僕らのアイは気持ち悪い』あらすじ紹介:歪んだ愛の物語に心惹かれる理由

僕らのアイは気持ち悪い 漫画 百合・ガールズラブ
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はじめに:その「アイ」は、愛か執着か

あなたの「愛」は、本当に「愛」ですか?それとも、ただの独りよがりな「アイ(私)」の欲望ではないでしょうか?

今回ご紹介する漫画、雨水汐先生が描く『僕らのアイは気持ち悪い』は、そんな根源的な問いを読者に突きつける、衝撃的な百合作品です。多くの恋愛物語が描くキラキラとした世界とは一線を画し、本作は人間の愛情が持つ、どこか薄暗く、執着に満ちた「気持ち悪い」側面を真正面から描きます。

物語全体を貫くテーマは、作中でも繰り返し示される「みんな“秘密”を隠してる」という一文。誰もが心の奥底に隠し持つ、他人には理解されないかもしれない歪んだ欲望や愛情の形。本作は、そんな秘密を抱えた少女たちの出会いと、そこから生まれる奇妙な共犯関係を、繊細かつ大胆に描き出します。

この記事では、なぜ多くの読者がこの「気持ち悪い」物語に心を掴まれてしまうのか、その唯一無二の魅力に迫ります。常識的な恋愛観を揺さぶる本作の世界へ、あなたをご案内します。

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基本情報:『僕らのアイは気持ち悪い』とは

物語の深淵に触れる前に、まずは基本的な情報を整理しておきましょう。以下の表は、本作の概要を一目で把握できるようにまとめたものです。これから読み進める上での道しるべとしてご活用ください。

項目内容
作品名僕らのアイは気持ち悪い
作者雨水汐
出版社一迅社
掲載誌コミック百合姫
ジャンル百合、GL、人間ドラマ

この表は、読者が求める情報を迅速に提供するだけでなく、検索エンジンやAIが作品情報を正確に理解する手助けにもなります。百合漫画のトップランナーである『コミック百合姫』で連載されていることからも、本作がジャンルの中でいかに注目されているかがうかがえます。

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作品概要:秘密を共有する二人の歪な関係

物語の中心にいるのは、それぞれが社会的に見て「気持ち悪い」と評されかねない秘密を抱えた二人の女性、小豆小麦(あずき こむぎ)と夜行れむ(やぎょう れむ)です。

主人公の一人、小豆小麦は、高校時代に付き合っていた元カノ・めぐるのことが忘れられず、記憶の中の彼女の身体を粘土で何度も作り続けるという執着に取り憑かれています。それは甘い思い出の反芻などではなく、完璧な過去を再現しようとする強迫的な行為です。

もう一人の主人公、夜行れむは、人間ではなく無機物である「人形」に性的興奮を覚えるという特異な嗜好を持つ女子高生。彼女の欲望は、生身の人間が持つ不完全さや揺らぎを許容できず、完璧で美しい造形物に向けられます。

この二人の閉じた世界が交錯するきっかけは、ある些細な事故でした。小麦がバイト先の100円ショップで自作の「めぐるフィギュア」を落としてしまい、後日こっそり回収しに戻ると、そこでバイト仲間のれむがそのフィギュアに対して倒錯的な情欲をぶつけている場面を目撃してしまうのです。

普通なら軽蔑や恐怖で終わるはずのこの出会いは、しかし、二人を奇妙な絆で結びつけます。互いの秘密を知った二人は、お互いを「気持ち悪い」と感じながらも、どこかで共感し、れむの理想のフィギュアを小麦が作るという「共犯関係」を築いていくことになるのです。これは愛でも友情でもない、歪んだ欲望の共有から始まる、新しい関係性の物語です。

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あらすじ:忘れられない元カノと人形愛の少女

物語は、主人公・小豆小麦が過去の恋人めぐるの幻影に囚われ、ひたすら彼女の姿を粘土で造形する孤独な日常から始まります。彼女の時間は、めぐると別れたあの瞬間から止まってしまっているのです。

ある日、小麦はバイト中に自作のフィギュアを店内で紛失してしまいます。営業終了後、誰にも見つかる前に回収しようと店に忍び込んだ彼女が目にしたのは、同僚の女子高生・夜行れむが、そのフィギュアを恍惚の表情で愛撫する衝撃的な光景でした。

互いの最も深い秘密を知ってしまった二人。しかし、その出会いは破滅ではなく、新たな関係の始まりを告げます。小麦の造形技術に理想を見出したりむは、自分だけの完璧なフィギュアの制作を彼女に依頼します。こうして、二人の歪で危険な共同作業が幕を開けるのです。

しかし、物語は二人の閉じた世界に留まりません。第1巻のクライマックスで、小麦は偶然にも本物のめぐると再会を果たします。感傷的な再会を期待した小麦に対し、めぐるは彼女の長年の想いを「ただの性欲」と一刀両断し、その心を完膚なきまでに打ち砕きます。

この残酷な現実によって、小麦はめぐるのフィギュアを作れなくなってしまいます。創作の拠り所を失い絶望する小麦を、れむは必死に支えようとしますが、その一方で、れむの親友である虹(にじ)は、二人の異常な関係に苛立ちを募らせていました。歪な二人の関係は、さらに複雑な四角関係へと発展していくのです。

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魅力、特徴:ただの百合漫画ではない深淵

本作が多くの読者を惹きつける理由は、単なる奇抜な設定だけに留まりません。その魅力は、より深く、複雑な部分に存在します。

1. 「気持ち悪い」の肯定と探求

この漫画の最大の魅力は、タイトルにもなっている「気持ち悪い」という感情から逃げず、むしろその核心に迫ろうとする姿勢にあります。作中では、登場人物たちの歪んだ欲望がジャッジされることはありません。代わりに、なぜ彼女たちがそのような感情を抱くに至ったのか、その孤独や渇望が丁寧に描かれます。

特筆すべきは、本作が「百合」というジャンルの枠組みを巧みに利用している点です。百合ジャンルの読者は、既に同性同士の恋愛という非典型的な関係性を受け入れる素地があります。作者は、その土壌の上で「対物性愛」という、さらにマイノリティ性の高いテーマを扱うことで、物語の射程を大きく広げています。これは単に「同性愛」を描くのではなく、「他者から理解され難い愛の形」そのものを描き、読者に「受け入れられる愛とは何か」という普遍的な問いを投げかけているのです。

2. 心理描写の巧みさ

本作の真髄は、キャラクターたちの内面を深く掘り下げる巧みな心理描写にあります。彼女たちの特異な嗜好は単なるギミックではなく、その裏側にある埋めがたい孤独感、人間関係への不信、過去への執着といった、誰もが抱えうる感情の現れとして描かれています。

特に、第1巻の終盤で見せる小麦の表情は圧巻です。元カノのめぐるに自身の想いを全否定され、絶望の淵に立たされた彼女が見せる「絶望と恍惚の泣き笑い」は、読者の心を強く揺さぶります。痛みと、どこか解放されたようなカタルシスが同居するこの表情は、本作が到達した心理描写の高みを示しています。

3. 可愛い絵柄と重いテーマの化学反応

雨水汐先生が描くキャラクターは、非常に可愛らしく、清潔感のあるタッチで描かれています。しかし、その絵柄とは裏腹に、物語が扱うテーマは執着、性的倒錯、トラウマといった非常に重く、シリアスなものです。

この「可愛い絵柄」と「重いテーマ」のギャップこそが、本作の独特な読後感を生み出す重要な要素です。可愛らしいキャラクターたちが抱える心の闇が深いほど、そのコントラストは鮮烈になり、読者に強烈な印象を残します。この手法は、読者を油断させ、安全な場所から引きずり出し、物語の核心にある痛みと直面させる効果を持っています。キャラクターの愛らしい外見は、彼女たちの内面の歪さをより際立たせるための、計算され尽くした演出なのです。ある読者が「ギャップにクラクラする」と評したように、このアンバランスさこそが本作の抗いがたい魅力となっています。

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見どころ・名場面・名言:心を揺ぶる瞬間

本作には、読者の記憶に深く刻まれる印象的なシーンが数多く存在します。

見どころ:秘密が交錯する緊張の夜

物語が大きく動き出すきっかけとなった、100円ショップでの小麦とれむの遭遇シーンは、最大の見どころの一つです。閉店後の静まり返った店内で、自分の秘密の結晶であるフィギュアを探す小麦の焦燥感。そして、暗闇の中でれむの倒錯的な行為を目撃してしまう瞬間の衝撃。二つの孤独な魂が、最も見られたくない形で交錯するこの場面は、息をのむほどの緊張感と背徳的な美しさに満ちています。

名場面:理想と現実の残酷な断絶

第1巻のクライマックス、小麦とめぐるの再会シーンは、本作のテーマを象徴する名場面です。小麦にとって、それは過去の美しい思い出との再会のはずでした。しかし、めぐるは小麦の想いを「ただの性欲」「(私を)人形のように接していた」と冷たく断罪します。この瞬間、小麦が長年抱きしめてきた「愛」は、相手を傷つける自己満足な「執着」であったという残酷な真実が突きつけられます。愛が持つ身勝手さと、それが他者に与える深い傷跡を生々しく描いた、本作屈指の重要シーンです。

名言:「僕らのアイは気持ち悪い」という告白

本作には特定の決め台詞は少ないですが、タイトルそのものが最も雄弁な「名言」と言えるでしょう。この「アイ」という言葉には、巧みなダブルミーニングが込められています。

一つは「愛」。小麦やれむが抱く愛情の形は、世間一般の物差しではかれば、確かに「気持ち悪い」ものかもしれません。

しかし、より重要なのはもう一つの意味、すなわち「アイ(私、自我)」です。彼女たちの愛は、相手のためではなく、徹頭徹尾、自分自身の渇望を満たすためのものです。小麦の愛は過去の美しい記憶を保存したいという「私」の欲望であり、れむの愛は自分の理想を完璧に満たす対象を求める「私」の欲望です。つまり、このタイトルは「私たちの愛は気持ち悪い」と同時に、「私たちの身勝手な自我(アイ)こそが気持ち悪い」という、登場人物たちによる痛切な自己分析であり、告白なのです。

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主要キャラクター紹介:歪な四角関係を織りなす人々

本作の複雑な物語は、それぞれが歪んだ「アイ」を抱える4人の主要キャラクターによって織りなされます。

小豆小麦 (Azuki Komugi):過去に囚われた造形主

元カノ・めぐるへの未練を断ち切れず、彼女のフィギュアを作り続ける本作の主人公。自分の行為を「愛」だと信じていますが、めぐる本人からは、彼女を人間としてではなく「人形のように」扱っていたと指摘され、自己の在り方を根底から揺さぶられます。れむとの出会いによって、その卓越した造形技術に新たな目的を見出しますが、それは人間関係からさらに遠ざかる道でもあります。れむとは、互いの歪さを補い合うような、まさしく「お似合いの二人」と言える共依存関係を築いていきます。

夜行れむ (Yagyou Remu):理想を求める人形愛者

生身の人間ではなく、完璧な造形物である人形に愛情と性欲を抱く女子高生。自分の嗜好が他者からどう見えるかを自覚した時の、絶望とも諦めともつかない表情は、彼女の孤独の深さを物語っています。小麦と出会ったことで、自身の理想を形にしてくれる存在を手に入れ、積極的に関係を築こうとします。しかし、彼女もまた、親友である虹の歪んだ愛情に束縛されています。

めぐる (Meguru):物扱いに傷ついた元カノ

小麦の元カノであり、彼女の執着の根源。現在は極度の「人間嫌い」として描かれていますが、それは小麦によって「人形のように」扱われた過去のトラウマが原因です。彼女の存在は、小麦が実践してきた「愛」が、いかに相手を深く傷つけるものであったかを示す、物語の生きた証拠と言えます。彼女の苦しみが、本作の「愛の身勝手さ」というテーマに説得力を与えています。しかし、そんな彼女自身もマスコットのぬいぐるみを溺愛する一面を見せており、その内面の複雑さがうかがえます。

虹 (Niji):歪んだ愛で支配する親友

れむの親友であり、彼女に過保護な態度を見せますが、その本質は歪んだ支配欲です。彼女は、れむを自分の思い通りに動く登場人物として、人生の「シナリオ」を描いている節があります。小麦の出現によって、そのシナリオが壊されることに強い苛立ちと怒りを感じています。小麦やれむの欲望が自己完結的であるのに対し、虹の欲望は他者を積極的にコントロールしようとする点で、ある意味最も「気持ち悪い」キャラクターかもしれません。

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Q&A:もっと知りたい『僕らのアイは気持ち悪い』

Q1: この漫画に原作はありますか?

いいえ、本作は雨水汐先生によるオリジナルの漫画作品です。小説などの原作はなく、『コミック百合姫』で連載されている、先生の独自の世界観が存分に発揮された物語です。

Q2: どんな人におすすめの作品ですか?

甘く幸せなだけの恋愛物語に物足りなさを感じている方には、特におすすめです。具体的には、以下のような方に強く推奨します。

  • 綺麗なだけではない、人間の心理の深淵に触れる百合作品を読みたい方。
  • 愛と執着、恋愛におけるエゴといったテーマに興味がある方。
  • 対物性愛など、特殊な愛の形を真摯に描く物語に触れたい方。
  • 可愛い絵柄とシリアスなテーマのギャップが生み出す、独特の世界観を味わいたい方。

逆に、読後感が爽やかな、明るいラブコメを求めている方には、タイトル通り刺激が強いかもしれません。

Q3: 作者の雨水汐先生はどんな方ですか?

雨水汐先生は、主に百合ジャンルで活躍されている漫画家ですが、その作風の幅広さには驚かされます。

本作のような、人間の心の闇や歪んだ関係性を描くシリアスで強烈な物語を手掛ける一方で、『欠けた月とドーナッツ』や『恋に恋するコイビト関係』といった、心温まる穏やかで可愛らしい恋愛物語も同時に執筆されています。愛の光と影、その両極を同じ作家が描いているという事実は、先生の人間観察の鋭さと、物語作家としての卓越した技量を示しています。

Q4: タイトルの「アイ」に込められた意味とは何ですか?

これは本作を読み解く上で非常に重要なポイントです。前述の通り、タイトルの「アイ」は「愛」と「アイ(私)」の二つの意味を持つと考えられます。

第一に、彼女たちの「愛」の形が、社会の規範から見れば「気持ち悪い」ものであることを示しています。

第二に、そしてより深く、彼女たちの愛が自己中心的、すなわち「私(アイ)」の欲望の延長線上にあることを示唆しています。相手の幸せを願うのではなく、自分の孤独を埋めるため、自分の理想を追求するため、自分のシナリオを完成させるために他者を求める。その身勝手な「アイ」のあり方こそが、この物語の核心にある「気持ち悪さ」の正体なのです。このタイトルは、作品全体のテーマを見事に表現した、秀逸な言葉遊びと言えるでしょう。

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さいごに:この「気持ち悪さ」から目が離せない

『僕らのアイは気持ち悪い』は、単なるキワモノやフェティッシュな物語ではありません。それは、愛という名の最も身勝手な欲望、誰もが心の奥に隠し持つかもしれない「気持ち悪さ」を、恐れず、そして共感をもって描き出した、極めて誠実な人間ドラマです。

巧みな心理描写、歪でありながらも切実なキャラクターたちの関係性、そして可愛い絵柄で描かれるからこそ際立つ心の痛み。そのすべてが絡み合い、読者を強烈に惹きつけます。

ありきたりな恋愛物語に飽きてしまったあなたへ。心に爪痕を残すような、深く、考えさせられる物語を求めているあなたへ。ぜひ、『僕らのアイは気持ち悪い』の「気持ち悪く」も美しい世界に触れてみてください。一度足を踏み入れたら、きっとあなたも、この物語から目が離せなくなるはずです。

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