『東京日報奇聞実録』レビュー!大正浪漫とオカルトミステリーの完璧な融合

東京日報奇聞実録 レトロ・ノスタルジック
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その「奇妙な噂」、取材いたします。大正浪漫奇譚『東京日報奇聞実録』へようこそ

もし、あなたの身の回りで起こった「科学では到底説明できない奇妙な出来事」を、専門に取材・掲載する新聞があったとしたら、どう思いますか?

舞台は、モダンな西洋文化と古くからの因習が混在する「大正時代」の帝都・東京。華やかな「浪漫」の光と、関東大震災などに象徴される「不安定」な影が交錯する、独特の空気感を持つ時代です。

本作『東京日報奇聞実録』は、まさにその時代の隙間に生まれた物語。「事実」を報じるはずの大手新聞社「東京日報」を舞台に、幽霊、呪い、都市伝説といった「奇聞(きぶん)」、すなわち“怪しく奇妙な噂話”を大真面目に追いかける記者たちの活躍を描きます。

この記事では、そんな異色のオカルト・ミステリー漫画『東京日報奇聞実録』のあらすじ、登場人物、そして私たちが今、本作に強く惹きつけられる理由を、ネタバレなしで徹底的に解き明かしていきます。

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作品世界への招待状:『東京日報奇聞実録』の基本情報

まずは、本作の世界観を構成する基本的な情報を表でご紹介します。

項目内容
作品名東京日報奇聞実録
原作海(かい)
作画戸田清太郎
出版社徳間書店
連載誌COMICリュウWEB
ジャンル大正ロマン、オカルトミステリー、バディもの
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帝都・東京、ここは「怪異」と「現実」が交わる場所

『東京日報奇聞実録』の物語は、大正時代の帝都・東京で始まります。

物語の核となるのは、大手新聞「東京日報」の社内に存在する「奇聞実録」欄。ここは、通常の政治部や社会部が扱うような「事実」に基づくニュースではなく、「怪奇現象」「都市伝説」「説明のつかない人々の噂」ばかりを収集・取材する、いわば社内でも異端とされる部署です。

主人公となる二人の新聞記者は、この「奇聞実録」欄の担当として、帝都にはびこる様々な「奇聞」の真相を追います。

彼らが追いかける「奇聞」は、果たして本当に超常的な「怪異」なのでしょうか。それとも、人間の「業」や「悪意」が生み出した「虚報」なのでしょうか。

本作の優れた点は、この大正という時代設定を単なる「レトロな背景」として消費していない点にあります。第一次世界大戦と第二次世界大戦の狭間にある束の間の平和、「モダンボーイ」「モダンガール」に象徴される西洋文化が花開く華やかさ。その一方で、まだ科学が万能ではなく、ガス灯のぼんやりとした明かりが落とす「闇」が、人々の心に「得体の知れないものへの畏怖」を色濃く残していました。

この「光と影」の強烈なコントラストこそが、本作で描かれる「怪異」が生まれる土壌として、圧倒的なリアリティをもって機能しているのです。

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ネタバレなし!物語はここから始まる

物語は、大手新聞「東京日報」で、将来有望な社会部記者を目指していたであろう一人の青年、葛見 聡(くずみ さとる)が主人公の視点となります。

彼は(おそらく何らかの理由で)左遷され、社内でもオカルト・ゴシップ扱いされる「奇聞実録」欄担当への配属を命じられてしまいます。

意気消沈する葛見。彼が配属された「奇聞実録」の部署で待っていたのは、変わり者として有名な先輩記者(あるいは相棒)、宮神 凛(みやがみ りん)でした。

徹底的な現実主義者である葛見は、「奇聞」など「ありえない」「非科学的だ」と断じます。しかし、宮神はそんな葛見を意に介さず、飄々(ひょうひょう)とした態度で「怪異」の存在を肯定します。

「夜な夜な赤ん坊の泣き声がするという井戸」

「必ず人身事故が起こる魔の踏切」

葛見は、非科学的な「奇聞」を否定しながらも、宮神と共に帝都で起こる奇妙な事件の取材に向かうことになります。

二人が取材を進めるうち、単なる噂話では済まされない、事件の「真相」と「怪異」の境界線が曖昧になっていきます。果たして彼らが辿り着く「事実」とは何なのか。これは、現代の私たちにも通じる「何を信じるか」を問う物語の始まりです。

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あなたもきっと「奇聞」の虜になる:『東京日報奇聞実録』の奥深い魅力

本作が多くの読者を惹きつける理由は、その緻密な世界観と奥深いテーマ性にあります。ここでは、本作の魅力を3つの側面に分けてご紹介します。

「大正浪漫」の空気感と「オカルト」の不気味な融合

本作の最大の魅力は、まずその「空気感」にあります。和装と洋装が混在する街並み、響き渡る路面電車の走行音、人々が集うカフェー文化といった「大正浪漫」の華やかな側面。

それと同時に、ガス灯のぼんやりとした明かりが作る暗闇、古い日本家屋に差し込む陰影、まだ科学が万能ではなかった時代の「得体の知れないものへの畏怖」という「オカルト」の不気味な側面。

この二つの相反する要素が、戸田清太郎先生の緻密で美麗な作画によって、極めて高いレベルで融合しています。ページをめくるだけで、読者は一瞬にして、あの独特の湿度と匂いを持つ大正時代の帝都へと誘われるのです。

事実か虚報か? 「新聞記者」が「怪異」に挑む意味

本作の主人公は、探偵でも霊能者でもなく、「新聞記者」であるという点が非常に重要です。

新聞記者の使命は、あくまでも「事実(ファクト)の報道」です。しかし、彼らが追うのは「奇聞(オカルト)」という、事実とは対極にあるかもしれない現象です。

この「事実 vs 怪異」という構造こそが、本作のテーマの核心であり、他のオカルト作品とは一線を画す最大の魅力と言えるでしょう。

目の前で起こった怪奇現象を前にした時、彼らは「記者」として何を報じるべきか? 報じないべきか? あるいは、その怪異を利用しようとする人間の「悪意」や「欲望」こそが、本当に報じるべき「事実」なのでしょうか?

これは、情報が氾濫し、「何が本当のニュースなのか」が見えにくくなっている現代のフェイクニュース問題にも通じる、非常に深く、知的な問いかけを読者に投げかけてきます。

光と影、理性と感性――対照的な二人が織りなす「極上のバディ」

そして何より、この物語の駆動力となっているのが、主人公二人の「バディ」としての関係性です。

怪異やオカルトを一切信じない、現実主義で懐疑的な葛見。

怪異を「在るもの」として受け入れ、民俗学的な知識を駆使して真相に迫る、飄々とした宮神。

まさに「光と影」「理性と感性」とでも言うべき、水と油のような正反対の二人。彼らが一つの「奇聞」を取材する中で、互いの価値観を揺さぶられ、時に反発し、時に補い合いながら、徐々に信頼関係を築いていくプロセスは、ミステリーの謎解きと並行して描かれる、もう一つの「本筋」です。

シリアスでダークになりがちな物語の中で、二人が交わす軽妙な会話劇は清涼剤の役割も果たしており、多くの読者が「この二人が好き」と感じる大きな魅力となっています。

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帝都を駆ける二人の記者:主要キャラクター紹介

本作を彩る、魅力的な二人の主人公をご紹介します。

葛見 聡(くずみ さとる):左遷されたリアリスト記者

本作の視点人物(主人公)の一人。「奇聞実録」欄に左遷されてきた、若き新聞記者です。怪異やオカルトを一切信じない徹底した現実主義者(リアリスト)であり、読者と同じ目線で「ありえない」と感じながら物語に入っていくための水先案内人でもあります。

相棒である宮神の突飛な言動に振り回される「ツッコミ役」でありながら、記者としての鋭い観察眼を持ち、怪異の裏に隠された「人間の」動機や嘘を見抜こうと奮闘します。

宮神 凛(みやがみ りん):怪異を愛するエキセントリックな知識人

葛見の相棒となる、もう一人の主人公。民俗学やオカルトに関する膨大な知識を持ち、むしろ「奇聞」の存在を積極的に信じ、楽しんでいる節さえある人物です。

飄々として掴みどころのない言動で葛見を翻弄しますが、その実、物事の「本質」を見抜く深い洞察力を持っています。彼(あるいは彼女)自身の出自にも何らかの謎があることが示唆されており、物語全体のミステリーにも深く関わってくるであろう重要人物です。

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今こそ「奇聞」に触れる時

『東京日報奇聞実録』は、単なる怪談やレトロなミステリーではありません。

それは、科学がすべてを解き明かす前の、華やかさと闇が混在した「時代の隙間」にあったかもしれない、「もう一つの東京」の貴重な記録(実録)です。

以下のような方に、本作は強くおすすめできます。

  • 大正時代のレトロで、少し不穏な雰囲気が好きな方
  • ドラマ「TRICK」や「X-ファイル」のように、オカルトとロジックがせめぎ合う物語が好きな方
  • 『憂国のモリアーティ』や『GOSICK -ゴシック-』のような、歴史的背景とミステリーが融合した作品が好きな方
  • そして何より、正反対の凸凹バディが活躍する物語に心惹かれる方

今夜、あなたが何気なく目にしているその「奇妙な噂」も、100年後には誰かにとっての「奇聞」として語られているかもしれません。

ぜひ本作を手に取り、葛見と宮神と共に、帝都・東京の「事実」の裏側に隠された「真実」を取材する旅に出てみてはいかがでしょうか。

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