みなさん、日々の「萌え」摂取は順調でしょうか。現代社会の荒波に揉まれ、心が渇いてしまってはいませんか。そんな乾いた心に、特大の潤いとときめき、そして心地よい「じれったさ」を注ぎ込んでくれる奇跡のような作品がついに誕生しました。
今、BL(ボーイズラブ)界隈で大きな話題をさらっている長与エリ子先生の最新作、「ツレと恋してどうすんの?」。このタイトルを目にした瞬間、あるいは表紙の二人の絶妙な距離感を目にした瞬間、ビビッと運命を感じた方も多いのではないでしょうか。
本作は、今や私たちの生活に欠かせない存在となった「ゲーム配信者」や「プロゲーマー」という現代的な職業を舞台に、普遍的で、でも何よりも尊い「友達から恋人へ(Friends to Lovers)」というテーマを極限まで美しく、そしてエロティックに描き出した傑作です。「今の心地よい関係を壊したくない」と願う切なさと、「触れたい、自分のものにしたい」という本能のぶつかり合い。モニター越しの輝かしい姿と、オフラインで見せる不器用な素顔のギャップ。
今回は、この作品がなぜこれほどまでに読者の心を掴んで離さないのか、その魅力を余すところなく、かつネタバレには最大限配慮しながら、たっぷりと語り尽くしたいと思います。記事を読み終える頃には、きっとあなたも電子書店の「購入」ボタンを押さずにはいられなくなるはずです。それでは、深淵なる「ツレ恋」の世界へ、ご案内いたします。
基本情報
まずは、この作品を手に取る前に押さえておきたい基本的なデータを整理しておきましょう。
| 項目 | 内容 |
| 作品名 | ツレと恋してどうすんの? |
| 著者名 | 長与エリ子 |
| 出版社 | 新書館 |
| レーベル | ディアプラスコミックス (Cheri+) |
| ジャンル | BL (ボーイズラブ) / 現代 / 配信者 / 幼馴染・友人 / じれキュン |
| 巻数 | 全1巻 (単行本) |
デジタルな世界で繰り広げられる、アナログで熱い恋の物語
新書館「ディアプラス」が贈る、信頼と実績の純愛
本作が出版されている「ディアプラスコミックス」といえば、BL好きなら誰もが知る名門レーベルです。情緒豊かで、キャラクターの心情を丁寧に描く作品が多く集まるこのレーベルから登場した「ツレと恋してどうすんの?」もまた、その系譜をしっかりと受け継いでいます。
長与エリ子先生といえば、前作「業務上過失ポルノ」などで見せた、働く大人の色気や、コミカルさとシリアスの絶妙なバランス感覚に定評がある作家さんです。前作ではサラリーマンの世界を描いていましたが、今作では一転して「配信者」という最先端の業界を舞台に選びました。しかし、舞台が変わっても先生の持ち味である「人間臭い感情の機微」や「フェティッシュな描写」は健在どころか、さらにパワーアップしています。
3年の時を超えて描かれる「関係性」の深み
本作の構成で特筆すべきは、物語の時間軸の巧みさです。読者の感想やレビューでも話題になっていますが、物語の序章にあたる「第0話」と、本編が動き出す「第1話」の間には、実はおよそ3年もの月日が流れています。
この「3年」という空白期間が、二人の関係性の重みを物語っています。0話の時点ですでに存在していた淡い想いや関係性が、3年という時間を経てどのように熟成され、あるいは変化しないまま維持されてきたのか。読者はその積み重ねられた時間(=友情の歴史)を想像することで、彼らが「恋人」という次のステップに進むことへの恐怖や葛藤を、よりリアルに感じ取ることができるのです。ただの思いつきの恋ではない、年季の入った「拗らせ」こそが、この作品の最大のスパイスとなっています。
恋の導火線は「ASMR」!? あらすじ
物語の主人公は、押しも押されもせぬ人気プロゲーマーであり、ゲーム実況配信者としても活躍する「さくら」。そして、彼の古くからの友人であり、同じく配信活動や動画編集を行っている「るね」。二人はネットの世界でもリアルの世界でも、互いを「ツレ(相棒)」と呼び合う、気兼ねない親友同士です。
さくらは、実は長年にわたりるねに対して密かな、しかし熱烈な恋心を抱いていました。しかし、「今の完璧に居心地が良い友達関係を壊したくない」「告白して拒絶され、隣にいられなくなるくらいなら、一生友達のままでいい」という、臆病かつ切実な想いから、その感情を鉄の理性で封印し続けてきました。
そんなある日、転機は唐突に訪れます。るねが新しい動画コンテンツとして「ASMR(聴覚刺激)」に挑戦したいと言い出したのです。それを聞いたさくらは、友人としての軽口と、ほんの少しの出来心から「女子向けのエロボイスとかアップしてみれば?」とそそのかします。
冗談半分、あるいは「るねがそんなことできるわけがない」という高みの見物だったのかもしれません。しかし、素直で研究熱心なるねは、その提案を真に受けて実際に音声を制作してしまいます。
完成したデータを聴いたさくらは、凍りつきます。いや、熱に浮かされます。そこに録音されていたのは、普段のあどけない友人・るねからは想像もつかないほど、艶やかで、甘く、聴く者の脳髄を直接揺さぶるような「雄」の色気が滲む声だったのです。
デジタルデータとして送られてきたその「声」は、さくらが必死に築き上げてきた理性のダムを決壊させるのに十分すぎる破壊力を持っていました。「一番仲が良い友達」でいられればそれでいい。そう思っていたはずなのに、その声を聞いた瞬間から、さくらの中で抑え込んでいた「欲」が暴走を始めます。
「恋人」になったら終わりが来ると思ってた。でも、「友達」のままじゃもう我慢できない。ASMRという聴覚の罠が引き金となり、ゲーム配信者とプロゲーマーの「デジタルモザイクラブ」が、画面の向こう側で静かに、しかし激しく幕を開けます。
ここが尊い!作品の魅力と特徴を徹底解剖
視覚と聴覚を刺激する「ASMR」というギミック
本作の最大の発明は、BLの起爆剤として「ASMR」を採用した点にあります。漫画は視覚媒体ですが、長与エリ子先生の描写力は、文字と絵を通じて読者の耳に「音」を届けてきます。
マイクに向かって囁く口元のアップ、息遣いが聞こえてきそうなフキダシの描き文字、そしてそれを聴いて反応してしまうさくらの表情。これらが組み合わさることで、読者はさくらと同じように、るねの声に翻弄される体験を共有することになります。物理的な接触(肌と肌の触れ合い)の前に、まず「声」という形のないものが内側に侵入してくる感覚。この「非接触なのに濃厚」という倒錯した状況が、現代的なエロティシズムを加速させています。
「国内最強プロゲーマー」のオンとオフ
主人公のさくらは、単なるゲーム好きではありません。プロゲーミングチームに所属し、国内大会で優勝を争うレベルの「トッププロ」として描かれています。この「プロフェッショナル」な設定が、恋愛パートでのポンコツぶりを際立たせます。
試合中の彼は、冷静沈着、正確無比な操作で敵をなぎ倒すカリスマです。チームの顔としてメディアにも露出し、多くのファンを抱える「雲の上の存在」。しかし、ひとたびヘッドセットを外し、るねのこととなると、そのIQは急降下。嫉妬に狂い、欲情に耐え、些細なLINEの返信に一喜一憂する姿は、まさに恋する乙女(中身は成人男性ですが)。
この「仕事ができる男が、恋には不器用」というギャップは王道ですが、本作では「ゲーム」という勝ち負けが明確な世界で頂点に立つ男が、恋愛という「正解のないゲーム」で苦戦している様子が、たまらなく愛おしく描かれています。
解像度が高すぎる「オタク・配信者」の生態
読者レビューでも絶賛されているのが、キャラクターたちの「配信者」としてのリアリティです。特に受けのるねが見せる「オタクムーブ」の解像度が異常に高いのです。
推しについて語る時の早口、独特のネットスラングの使用、配信機材へのこだわり、そして動画編集作業の細かさ。これらが「漫画的な記号」としてではなく、「実際にこういう配信者いるよね」と思わせる生々しさで描かれています。美形でかっこいいはずのキャラクターたちが、中身はしっかりと「こじらせたオタク」であるという親近感。これが、彼らを単なる鑑賞対象ではなく、「応援したくなる隣人」へと昇華させています。
長与エリ子流・フェティシズムの炸裂
長与エリ子先生の画力の高さは、単に「絵が綺麗」というだけではありません。「どこに色気を感じるか」というフェティシズムの表現が卓越しています。
例えば、レビューでも言及されている「指のシワ」。キーボードやマウスを操作する手、マイクに触れる指先、その関節の一つ一つに宿るリアリティが、キャラクターの実存感を高めています。また、スーツ姿の乱れや、部屋着のルーズな着こなし、ふとした瞬間の目線の動きなど、セリフ以外の部分で語られる情報量が凄まじいのです。
特に「目」の描写は必見です。普段は穏やかなさくらの目が、るねを「捕食対象」として見た瞬間にどう変化するのか。その瞳孔の開き具合や、ハイライトの揺らぎだけで感情を伝える技術は、まさに職人芸と言えるでしょう。
嫌な奴が出てこない「心理的安全性」の高い世界
BL作品の中には、二人の仲を引き裂く強力なライバルや、理解のない周囲の人々が登場し、読者をハラハラさせるものも少なくありません。しかし、本作はそうしたストレス要素が極めて少なく、非常に「心理的安全性」が高い作品です。
トラブルはあくまで二人の内面(葛藤や勘違い)から生じるものであり、外部からの悪意ある攻撃ではありません。そのため、読者は余計なストレスを感じることなく、「二人がどうやって自分たちの殻を破るのか」という一点に集中して楽しむことができます。疲れた夜に読んでも心が削られず、むしろ癒やしと活力を与えてくれる。そんな「優しさ」も、この作品が多くの支持を集める理由の一つです。
誰もが恋に落ちる!主要キャラクター紹介
さくら:最強の名を冠する、恋する臆病な獅子
「国内最強プロゲーマーのエイムも、あいつの心だけは捉えられない」
本作の攻め。プロゲーミングチームの看板選手であり、実力・人気ともに国内トップクラスを誇るカリスマ配信者。ゲーム内では神がかったプレイで敵を殲滅するクールな男ですが、その実態は、長年の友人であるるねに重すぎる感情を抱く「片思い拗らせ男子」です。
彼の魅力は、なんといってもその「忍耐力」と「独占欲」のせめぎ合いにあります。3年以上もの間、友人の座に甘んじながら、虎視眈々と(あるいは絶望しながら)るねを見守り続けてきました。るねの無自覚な言動に振り回され、配信の裏側で一人頭を抱える姿は、ファンの前で見せる姿とは真逆。しかし、いざスイッチが入った時に見せる「雄」の顔は、プロゲーマーとしての勝負強さを彷彿とさせる強引さと色気に満ちており、そのギャップで読者をノックアウトします。
るね:天然フェロモンを撒き散らす、罪作りな相棒
「君のその声が、俺の理性をバグらせる最大のウィルス」
本作の受け。さくらの配信者仲間であり、動画編集のプロフェッショナル。さくらとは「ツレ」として遠慮のない関係を築いていますが、恋愛に関しては驚くほど鈍感で、天然な一面を持っています。
彼の恐ろしいところは、自分が「可愛い」あるいは「色っぽい」という自覚が全くないまま、致命的な攻撃を繰り出してくるところです。ASMR動画の件も、あくまで「良いコンテンツを作りたい」というクリエイター魂からの行動であり、それがさくらをどう刺激するかまでは計算していません。しかし、その無防備さこそが最大の武器。普段のオタク全開な喋り口調と、ふとした瞬間に見せる艶っぽい表情の落差は、さくらだけでなく読者の情緒もめちゃくちゃにします。さくらへの信頼は絶大で、それが友情なのか愛情なのか、本人も気づいていないグラデーションの中にいる様子が丁寧に描かれています。
購入前に解消!Q&Aコーナー
Q1: 原作小説などはありますか?
いいえ、本作は長与エリ子先生による完全オリジナルの漫画作品です。原作小説やドラマCDなどは存在しません(2025年現在)。そのため、漫画のコマ割りや演出、間の取り方が全てであり、長与先生が描きたかった世界観がダイレクトに表現されています。原作ファンとの解釈違いなどを気にする必要もなく、純粋に漫画としての完成度を楽しむことができます。
Q2: どんな人におすすめですか?
この作品は、以下のような要素に惹かれる方に特におすすめです。
- 関係性の変化を楽しみたい方: 「ただの友達」が「特別な存在」に変わる瞬間のカタルシスを味わいたい方。
- 現代的な設定が好きな方: ゲーム実況、配信、ASMR、Discord通話など、現代のツールを駆使した恋愛模様にリアリティを感じる方。
- ギャップ萌えに弱い方: クールな攻めが受けの前だけで崩れる姿や、天然な受けが無自覚に誘惑する構図が大好物な方。
- 絵の美しさを重視する方: 人体の美しさだけでなく、服のシワや小物の質感まで丁寧に描かれた作品を求めている方。
- ハッピーエンドが保証された安心感が欲しい方: ドロドロした展開よりも、二人の愛が深まる過程をじっくり見守りたい方。
Q3: 作者の長与エリ子先生はどんな方?過去作は?
長与エリ子先生は、美麗で色気のある作画と、コミカルかつドラマチックなストーリーテリングで人気を博している作家さんです。過去の代表作「業務上過失ポルノ」シリーズでは、サラリーマン同士の年の差ラブを描き、ちるちるアワードなどのBLランキングでも高い評価を得ています。
前作が「スーツとオフィス」の魅力だとしたら、今作は「部屋着とモニター」の魅力。舞台は変われど、先生の描くキャラクターたちが持つ「人間としての愛らしさ」と「どうしようもない性(さが)」の描写は共通しています。今作から入って過去作に遡るのも、非常に幸せな読書体験になるでしょう。
Q4: 電子書籍と紙の単行本、どちらで読むのがおすすめ?
どちらも素晴らしいですが、本作のテーマ性を考えると「電子書籍」での読書体験は格別です。作中でキャラクターたちがスマホやPC画面を見つめるシーンが多く登場するため、タブレットやスマホで読んでいると、まるで自分もその配信のリスナーになったかのような、あるいは彼らのやり取りをこっそり覗き見ているかのような没入感が味わえます。
一方で、紙の単行本には、カバー裏のおまけ漫画や、紙ならではの印刷の温かみがあります。長与先生の繊細なペンタッチを隅々まで鑑賞したい、本棚に「推し」を並べたいというコレクター気質の方には、紙の書籍がおすすめです。結論としては、「両方買う」が正解かもしれません(笑)。
Q5: 続巻の予定はありますか?
現時点では「全1巻」として完結していますが、BL作品では人気に応じて「続編」や「スピンオフ」が描かれることは珍しくありません。特に本作のような「配信者」設定は、日常のエピソードを作りやすく、カップル成立後の「その後」も見たいという声が多く上がることでしょう。読者の応援(レビューや購入)が続編への鍵となりますので、読み終わったらぜひ感想を発信して、続編希望の声を届けましょう!
さいごに:画面の向こう側にある、体温を感じる恋
ここまで長々と語ってしまいましたが、「ツレと恋してどうすんの?」の魅力は、実際にページをめくり、彼らの表情を見て、彼らの言葉(と心の声)を聴かなければ、その全てを理解することはできません。
この作品が描いているのは、単なる流行りの設定を使ったラブコメではありません。デジタル化が進み、人と人との距離感が変わりつつある現代において、それでも変わらない「誰かを想う気持ち」の強さです。画面越しなら言えること、画面越しでも伝わってしまうこと、そして、直接会って肌を合わせなければ確かめられないこと。その全てをひっくるめて、恋をすることの面倒くささと、それ以上の尊さを教えてくれる一冊です。
さくらが3年間抱えてきた重たい愛が、るねの無自覚なASMRによってどう爆発するのか。そして、「ツレ」という関係性が終わった後、二人にどんな新しい、そして甘い関係が待っているのか。
どうか、あなた自身の目で、耳で、心で、二人の「配信」の結末を見届けてください。読み終えた後、きっと世界が少しだけピンク色に見え、明日からの推し活や日常がもっと楽しくなるはずです。


