『Myther(ミザー)』完璧な自分は希望か破滅か?SNS時代に刺さるSFクライムサスペンス

Myther1巻 クライムサスペンス
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「もっと違う自分になれたら」「自分のこの欠点さえなければ」――。

誰しも一度は、今とは違う「理想の自分」を夢見たことがあるのではないでしょうか。もし、そんな願いをテクノロジーの力で叶えられるとしたら、あなたはそれを使いますか?

今回ご紹介する漫画『Myther(ミザー)』は、まさにそんな世界を描いたSFクライムサスペンスです。物語の舞台は、デバイス一つで自分の人格を理想通りにデザインできるようになった近未来。人々はコンプレックスや弱さから解放され、自信に満ちた人生を手に入れ始めます。しかし、その輝かしい技術の光の裏には、深い闇が広がっていました。不正な使用によって人格が崩壊し、凶悪犯罪を引き起こす「ミザークライム」が、社会問題として静かに蔓延していたのです。

本作は、単なるSFアクションではありません。理想の自分を演じることが当たり前になった現代のSNS社会に生きる私たちに、「本当の自分とは何か?」という鋭い問いを突きつけます。もし、自分の弱さをすべて消し去り、完璧な自分になれたとしたら、そこに残るのは本当に「あなた」なのでしょうか?

この記事では、すでに多くの読者を虜にし、発売後すぐに重版が決定した話題作『Myther』の基本情報から、その多層的な魅力、物語の核心に迫る見どころまで、徹底的に解説していきます。

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一目でわかる『Myther』基本情報

まずは本作の基本的な情報を表でご紹介します。気になるポイントをさっと確認できます。

項目内容
タイトルMyther(ミザー)
作者八田てき
ジャンルSF、クライムサスペンス
出版社講談社
掲載誌月マガ基地(コミックDAYS)
巻数全2巻
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あなたは誰ですか?――人格をデザインする世界の光と闇

『Myther』の世界観は、現代社会が抱える問題を映し出す鏡のような設定が特徴です。物語の時代は「延嘉」という架空の年号が使われる近未来。一人の科学者が開発した「Myther(ミザー)」というデバイスが、社会に革命をもたらしました。このデバイスは、装着者の人格を理想の姿に書き換えることを可能にします。内気な性格を社交的に、臆病な心を勇敢に――人々は自らの手で「なりたい自分」をデザインし、劣等感から解放されるという恩恵を享受していました。

しかし、どんな革新的な技術にも副作用はつきものです。Mytherを不正に使用したり、改造したりすることで、デザインした人格が暴走し、元の人格との乖離から精神が崩壊。結果として、常人には考えられないような凶悪犯罪を引き起こす者たちが現れます。これが「ミザークライム」と呼ばれる、本作の社会が抱える隠れた病巣です。

この設定は、私たちが日常的に利用するSNSと深くリンクしています。笑顔を強調した写真、前向きな言葉で埋め尽くされた投稿、洗練されたライフスタイルの演出。私たちは皆、無意識のうちにオンライン上で「理想の自分」をデザインし、演じています。それが悪いわけではありませんが、ふとした瞬間に、演じている自分と本当の自分の境界線が曖昧になり、自分が何者かわからなくなるような感覚に陥ることはないでしょうか。『Myther』の世界は、そんな現代人の心の揺らぎを増幅させ、その果てにある光と闇を克明に描き出しているのです。

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理想の果てに待つものとは――物語の幕開け

社会がMytherの光と闇に揺れる中、物語は一人の男を軸に動き出します。彼の名はキョウ。日本当局直属の secretive な組織「特務情報局」に所属するエージェントです。彼の任務は、公にできないミザークライムを秘密裏に処理すること。被害者の記憶を操作し、事件そのものを無かったことにするなど、まさに国家の「掃除屋」としての役割を担っています。

キョウは、任務遂行にあたって一切の感情を表に出しません。まるで完璧にプログラムされた兵士のように、ただ当局への忠誠心だけを胸に、淡々と、そして冷徹に犯罪者と対峙します。しかし、物語を読み進めるうちに、読者はある疑念を抱くことになります。「その揺るぎない忠誠心こそが、彼にとっての『理想の人格』なのではないか?」と。

感情を封じ込め、正義の仮面を被って戦い続けるキョウ。彼のその仮面の下には、どんな素顔が隠されているのか。そもそも、そこに「本当の自分」は存在するのでしょうか。物語は、ミザークライムという凶悪犯罪を追うサスペンスフルな展開と共に、主人公キョウ自身の謎めいた内面へと深く潜っていくのです。

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読者を虜にする『Myther』の多層的な魅力

『Myther』が多くの読者の心を掴んで離さない理由は、その魅力が一つではないからです。美麗なアートワークから奥深いテーマ性まで、本作を構成する多層的な魅力をご紹介します。

息をのむほど繊細で耽美なアートワーク

まずページを開いて最初に心を奪われるのが、八田てき先生が描く圧倒的なビジュアルです。キャラクターたちの表情一つひとつに宿る繊細な感情、光と影を巧みに利用した構図、そしてどこか退廃的で美しい世界観。その耽美な作画は、ページをめくる手を止めさせません。特に、黒手袋やスーツといったモチーフは、キャラクターの色気を最大限に引き出し、物語に漂う緊張感をより一層高めています。この美しさが、時に起こる激しいアクションシーンや残酷な描写と対比されることで、読者に強烈な印象を残すのです。

SNS時代に突き刺さる「本当の自分」という根源的な問い

本作の最大の魅力は、そのテーマ性にあります。「理想の自分」を追求するあまり、本来の自分を見失ってしまうという物語の構図は、現代社会への鋭い問いかけです。私たちはSNS上で誰もが「編集者」であり「演出家」です。より良く見せようと加工を重ねるうちに、現実の自分とのギャップに苦しむ。『Myther』は、そんな現代人が抱えるアイデンティティの揺らぎを、SFサスペンスという形で巧みに描き出しています。「変わりたい」と一度でも願ったことのあるすべての人にとって、本作は他人事ではない、自分自身の物語として心に響くはずです。

シリアスな世界に光る、人間味あふれるキャラクター描写

物語のトーンは全体的にシリアスですが、決してそれだけではありません。緊迫した状況の中でふと差し込まれるコミカルなやり取りや、キャラクターたちの意外な一面が、物語に温かみと奥行きを与えています。特に主人公のキョウは、感情を排した完璧な兵士として描かれますが、時折見せる人間らしい表情や葛藤が、読者の心を強く惹きつけます。レビューでも「キョウくんに幸せになってほしい」といった声が見られるように、彼の不器用ながらも必死に任務をこなす姿に、多くの読者が感情移入し、応援したくなってしまうのです。

細部まで作り込まれた世界観とフェティッシュなモチーフ

『Myther』の世界は、細部に至るまで緻密に作り込まれており、読者を物語へ深く引き込みます。その代表例が、作中に登場する「鎭守香(ちんすこう)」というアイテムです。これは一見タバコのように見えますが、実はリラクゼーション用の香具。煙の揺らぎや香りの描写が非常にリアルで、まるでその場の空気感まで伝わってくるようです。このようなディテールへのこだわりが、架空の近未来という設定に確かな実在感を与え、物語への没入度を格段に高めています。

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物語の核心に迫る!見どころと名場面

ここでは、ネタバレを避けつつも『Myther』の物語の核心に触れる、特に印象的な見どころや名場面をピックアップしてご紹介します。

静寂と緊張が交差する――キョウと友理の「鎭守香」のシーン

本作のキーパーソンの一人であり、Mytherの開発者でもある友理(ともさと)。彼とキョウが、リラクゼーション用の香具「鎭守香」を共に嗜むシーンは、本作の空気感を象徴する名場面です。激しい戦闘や緊迫した捜査の合間に訪れる、静かで穏やかな時間。ゆらりと立ち上る煙の中で交わされる何気ない会話が、二人の間にある深い信頼関係を静かに物語ります。感情を表に出さないキョウが、唯一心を許しているかのようなこの瞬間は、彼の人間的な側面を垣間見ることができる貴重なシーンであり、多くの読者の心に残っています。

感情を排した「完璧な兵士」キョウが見せる葛藤の瞬間

「完璧な兵士」として任務を遂行するキョウですが、彼のその仮面がわずかに揺らぐ瞬間こそ、本作の最大の見どころです。予期せぬ事態に直面した時のかすかな動揺、任務と倫理観の間で揺れる内面の葛藤、そして自身の過去に触れられた時の反応。そうした些細な表情の変化や行動の一つひとつに、彼の隠された本質に迫るヒントが散りばめられています。読者はその小さな綻びを見つけるたびに、彼の真の姿に一歩近づくようなスリルと期待感を味わうことになるでしょう。

スピード感と美しさが両立した圧巻のアクション

ミザークライムの犯罪者との戦闘シーンは、本作の大きな魅力の一つです。八田てき先生の描くアクションは、ただ激しいだけではありません。キャラクターの動きは流れるようにしなやかで、スピード感と美しさが両立しています。まるで洗練された舞踏を見ているかのような戦闘描写は、残虐なシーンでありながらも一種の芸術性を感じさせます。この静と動、美と暴力のコントラストが、『Myther』独自の世界観を確立しているのです。

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物語を彩る主要キャラクター紹介

『Myther』の魅力的な世界を生きる、中心的なキャラクターをキャッチコピーと共に簡単にご紹介します。

キョウ:正義の仮面を被る、忠誠の兵士

本作の主人公。日本当局直属の特務情報局に所属し、ミザークライムの処理を担うエージェント。感情を押し殺し、完璧な兵士として冷徹に任務をこなしますが、その仮面の下の素顔は謎に包まれています。彼の行動原理である「当局への忠誠」が、果たして彼自身の意志なのか、それとも与えられた役割なのか。物語を通じて、彼の本当の姿が少しずつ明らかになっていきます。

友理:「Myther」を生み出した、涼やかな色気を纏う開発者

理想の人格をデザインするデバイス「Myther」を開発した天才科学者。キョウの恩人でもあり、彼のことを深く気にかけている人物です。涼やかで知的な雰囲気を持ちながら、どこか掴みどころのないミステリアスな魅力を放っています。物語の根幹を成す技術を生み出した張本人として、彼の存在は物語の鍵を握っています。

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もっと知りたい!『Myther』Q&A

さらに『Myther』の世界を深く楽しむためのQ&Aコーナーです。気になる疑問にお答えします。

Q1: この漫画に原作はありますか?

いいえ、『Myther』は八田てき先生による完全オリジナルの漫画作品です。小説などの原作はなく、この漫画で初めて世に出た物語となります。緻密に練られた世界観とストーリーを、ゼロから楽しむことができます。

Q2: どんな人におすすめですか?

以下のような方に特におすすめしたい作品です。

  • 『PSYCHO-PASS サイコパス』や『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』のような、近未来を舞台にしたSFサスペンスが好きな方
  • 人間の心理やアイデンティティといった深いテーマを扱う、考察しがいのある物語を求めている方
  • 八田てき先生が描く、繊細で美しいアートワークやキャラクターデザインに魅力を感じる方
  • SNSでの自分と現実の自分のギャップに、少しでも思い当たることがある方

Q3: 作者の八田てき先生はどんな方ですか?過去作も知りたい!

八田てき先生は、これまで主にBL(ボーイズラブ)ジャンルで活躍され、多くのファンを持つ実力派の漫画家です。代表作には、ヤクザとアイドルの関係を描いたコメディ『やくざの推しごと』や、シリアスな人間ドラマが胸を打つ『紙の舟で眠る』、『遥か遠き家』などがあります。本作『Myther』は、少年漫画誌系のWEBサイトでの連載であり、SFサスペンスという新たなジャンルへの挑戦作ですが、先生の持ち味である美麗な作画、キャラクターの繊細な心理描写、そして緻密な物語構成力は健在。むしろ、その才能が新しいフィールドでさらに輝きを増していると評判です。

Q4: 作中に登場する「鎭守香」とは何ですか?

「鎭守香」は、作中に登場する架空のアイテムで、リラクゼーション効果のある香具です。タバコのように火をつけて煙を吸い込みますが、ニコチンなどは含まれていない設定です。このアイテムは、ただの小道具ではありません。殺伐とした世界観の中でキャラクターたちが束の間の安らぎを得るための象徴であり、特にキョウと友理の関係性を描写する上で重要な役割を果たしています。こうした細やかな設定が、作品世界にリアリティと深みを与えています。

Q5: この作品のテーマは、現代社会とどう繋がっていますか?

本作のテーマは、現代社会、特にSNS文化と密接に繋がっています。Mytherを使って「理想の自分」になることは、SNSでプロフィールを飾り、完璧な日常を演出しようとする現代人の姿と重なります。誰もが少しでも良く見られたい、認められたいという承認欲求を抱える中で、いつしか「本当の自分」との境界が曖昧になっていく。本作は、そんな現代社会が抱えるアイデンティティの危機を、「ミザークライム」という形で極端に描いた寓話とも言えます。「あなたは、本当のあなたですか?」――この問いは、画面の向こうの物語ではなく、今を生きる私たち自身に向けられたものなのです。

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さいごに:あなたの「理想」を揺さぶる一冊

『Myther』は、息をのむほど美しいアートと、スリリングなクライムサスペンスが融合した、極上のエンターテイメント作品です。しかし、その魅力はそれだけにとどまりません。読み終えた後には、美しさと怖さ、憧れと違和感が入り混じった、不思議な余韻が心に残ります。

「本当の自分とは何か?」「理想の自分になることに、どんな意味があるのか?」

この物語は、私たちに簡単には答えの出ない、しかし目を背けることのできない問いを投げかけてきます。もしあなたが「今の自分を変えたい」と一度でも考えたことがあるなら、この物語はきっとあなたの心の深い部分を揺さぶるはずです。

全2巻というコンパクトさで、濃密な物語が完結しているため、一気に読み通すことができます。ぜひ、八田てき先生が描く美しくも危険な世界に足を踏み入れ、キョウと共に「自分とは何か」を巡る旅に出てみてください。あなたの「理想」が、根底から覆されるような体験が待っているかもしれません。

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