はじめに:「幽霊が出るから怖い」……そんな常識は、資本主義の前では無力化する!?
あなたは「不労所得」という甘美な響きに憧れたことはありませんか? 汗水垂らして働く毎日から解放され、家賃収入だけで悠々自適に暮らす……それは現代社会を生きる多くの人々が抱く、切実な夢と言えるでしょう。しかし、もしその夢の城が、この世ならざる者たちが巣食う「最恐の心霊スポット」だったとしたら、あなたならどうしますか?
「恐怖で逃げ出す」? いえいえ、それは素人の考えです。
真の強者はこう考えます。
「人間が入らないなら、幽霊を住まわせて家賃を取ればいいじゃない」
今回ご紹介するのは、新潮社「くらげバンチ」にて連載中の、常識破りのホラーコメディ『訳アリ心霊マンション』です。SNSを中心に爆発的な話題を呼び、「次にくるマンガ大賞2023」Webマンガ部門で第4位に輝いた本作。ホラー漫画としてのガチすぎる画力と、それをねじ伏せる主人公の狂気的なポジティブさが織りなす、前代未聞のマンション経営録。
なぜこの作品が、ホラーファンのみならず、日々の労働に疲れた現代人の心を掴んで離さないのか? その理由を、物語の構造、キャラクターの特異性、そして作品に込められた(かもしれない)深遠なテーマから徹底的に紐解いていきます。これを読めば、あなたもきっとこのマンションの「入居者」になりたくなるはずです。
基本情報
まずは、本作の骨格となる基本データを確認しましょう。客観的な事実は、作品の信頼性を裏付ける重要な要素です。
| 項目 | 内容 |
| 作品タイトル | 訳アリ心霊マンション |
| 作者 | ネブクロ |
| 出版社 | 新潮社 |
| 連載媒体 | くらげバンチ |
| ジャンル | ホラーコメディ / ギャグ / アクション |
| 受賞歴 | 「次にくるマンガ大賞2023」Webマンガ部門 第4位 |
| 関連賞 | 「くらツイ漫画賞」大賞受賞作(連載のきっかけ) |
作品概要
SNSから生まれた「バズ」の正体
『訳アリ心霊マンション』は、現在Web漫画サイト「くらげバンチ」にて好評連載中の作品です。本作の起源は、新潮社がTwitter(現X)上で開催した「くらツイ漫画賞」にあります。この賞で大賞を受賞したことがきっかけとなり、連載が決定したいわゆる「サラブレットオモロ漫画」です。
連載開始直後から、そのインパクト絶大な第1話がSNSで拡散され、瞬く間に人気タイトルへと成長しました。特に評価されているのは、作者であるネブクロ先生の圧倒的な「画力」と「ギャグセンス」の融合です。2023年8月には「次にくるマンガ大賞2023」Webマンガ部門で第4位という高順位を記録しており、Web漫画界におけるホラーコメディの金字塔としての地位を確立しつつあります。
「怖くない」のに「怖い」? 新感覚の読書体験
本作を語る上で欠かせないのが、そのジャンルの特異性です。基本はコメディですが、描かれる霊のビジュアルは本格的なホラー漫画そのもの。しかし、読後は不思議と「スッキリした」「笑った」という感想が残ります。ホラーが苦手な層には「怖くないホラー」として、ホラー好きには「クリーチャーデザインが秀逸なギャグ」として、全方位に訴求する稀有な作品です。
あらすじ
夢の不労所得生活……のはずが?
物語の主人公、**東雲薫(しののめ かおる)**は、青春時代も趣味の時間もすべて犠牲にし、ブラックな労働環境で働き続けてきた青年です。彼の唯一の原動力、それは「いつか不労所得を得て、遊んで暮らす」という固い決意でした。
血の滲むような努力の末、彼はついに中古マンションを丸ごと一棟購入することに成功します。これで薔薇色の大家さんライフが始まる……と思いきや、そこは誰もが恐れる「心霊マンション」だったのです。
幽霊 vs 強欲大家
夜な夜な発生する心霊現象、徘徊する悪霊たち。通常の入居者は恐怖に震えて逃げ出し、入居率はまさかのゼロ。ローンの返済が迫る中、薫は絶望するどころか、常人には理解不能な結論に達します。
「入居者がいないなら、そこにいる霊を住まわせればいい」
薫は持ち前の(何かが欠落した)精神力で、マンションに巣食う地縛霊や悪霊たちを次々とスカウトし始めます。網を持って物理的に捕獲したり、巧みな営業トークで勧誘したりと、その手段は選ばないアグレッシブさ。
こうして、欲望に忠実な大家・東雲薫と、大家の圧に押される幽霊たちによる、奇妙で騒がしい共同生活が幕を開けるのです。
魅力、特徴
本作が持つ多層的な魅力を、3つの視点から深掘りします。
1. 圧倒的画力が生む「恐怖と笑い」のギャップ
ネブクロ先生の描く幽霊は、正直に言って「直視できないレベル」で怖いです。腐敗した肉体、恨みに満ちた表情、歪な骨格……それは純粋なホラー漫画のクオリティそのものです。担当編集者ですら「夢に出てくるので勘弁してほしい」と悲鳴を上げるほどのリアリティがあります。
しかし、その「最恐」のビジュアルに対し、主人公の薫はあまりにも「ドライ」です。霊がどんなに恐ろしい形相で迫っても、彼は「家賃払える?」「内見?」とビジネスライクに対応します。この「ガチの恐怖画像」に「日常的なツッコミ」が入ることで、緊張と緩和の落差が生まれ、爆発的な笑いへと昇華されるのです。シリアスな空気が一瞬で崩壊するカタルシスこそ、本作最大の武器と言えるでしょう。
2. 「銀魂」イズムを感じるバトルと人情
本作は単なるギャグ漫画ではありません。物語が進むにつれ、除霊師や強力な悪霊が登場し、本格的な「バトル展開」も描かれます。
普段はふざけているキャラクターたちが、ここぞという場面で見せるシリアスな戦闘シーンは圧巻。読者からは「銀魂のようだ」と評されることもあり、ギャグパートとのメリハリ(味変)が作品に深みを与えています。
また、ただ倒すだけでなく、霊たちの生前の未練や悲しみに寄り添う(あるいは利用する)展開もあり、笑いの中にもふと涙を誘う「人情」や「尊さ」が隠されている点も見逃せません。
3. 現代社会へのアンチテーゼ?
深読みすれば、本作は「死への恐怖」すら凌駕する「労働からの解放への執着」を描いた、現代社会への風刺とも受け取れます。幽霊よりも「無職になること」や「借金」の方を恐れる薫の姿は、現代人の悲哀とたくましさを象徴している……のかもしれません。悪霊さえも労働力や家賃の徴収対象として見るその姿勢は、ある意味で究極の資本主義的ホラーコメディと言えるでしょう。
主要キャラクターの紹介
本作を彩る、個性が強すぎるキャラクターたち(人間・霊)を詳細に紹介します。
東雲 薫(しののめ かおる)
「家賃さえ払えば、神様だろうが悪霊だろうが入居者様です」
本作の主人公。元社畜で、現在は心霊マンションのオーナー。
霊に対する恐怖心が「完全に欠落」しており、どんなにおぞましい悪霊を前にしても動じない異常なメンタルの持ち主です。その態度は常に大家としての利益追求に向いており、悪霊を「お客様」として扱い、時には家賃滞納者に容赦ない取り立てを行います。
彼がなぜこれほどまでに肝が据わっているのか、単に鈍感なのか、それとも過去に秘密があるのかは、物語の重要な謎の一つです。
カミキリ様
「……(シャキーン)」
第1話から登場する古参の入居者(霊)。
巨大なハサミと不気味な風貌を持つ悪霊ですが、薫との共同生活を通じて、次第にマスコットキャラクター的な愛嬌を見せるようになります。読者からの人気が非常に高く、作者のSNSでは「推し」として描かれることもしばしば。
薫との関係性は、大家と店子を超えた不思議な信頼関係(あるいは共依存?)で結ばれており、一部のファンからは「おねショタ」的な文脈で愛でられることもある、本作のヒロイン(?)的存在です 5。
日下部 ツヅミ(くさかべ つづみ)
「ちょ、ちょっと待って! 常識なさすぎじゃない!?」
「祓い屋」に所属する女性除霊師。
弟のスズと共に任務にあたりますが、基本的には常識人であり、薫やスズの奇行に振り回されるツッコミ役です。弟に比べて見た目が少し野暮ったい(もさい)と評されることもありますが、弟想いの優しい姉であり、仕事に対しては真面目です。せっせとお札を作成したり、産婆の幽霊を調査したりと、地道な努力家でもあります。
日下部 スズ(くさかべ すず)
「これは女装じゃないよ。『可愛装(かわいそう)』だよ」
ツヅミの弟であり、日下部家の次男。
一見すると可愛らしい少女に見えますが、これは女装です。しかし本人はこれを「女装」ではなく、「可愛装(かわいそう)」と呼んでいます。「可愛い格好をするのが好きだから」という理由に加え、日下部家に伝わる因縁が関係しています。
かつて日下部家の次男が除霊に失敗し、逆に呪われてしまった事件があり、その呪いをいなすためにあえてこの格好をしているという裏設定があります。さらに、その因縁の悪霊を使役しており、その実力は「天災級」のマトリョーシカを護送したり、踏切の幽霊を一撃で消滅させたりするほど強力です。
見た目はキュート、中身は最強の除霊師というギャップ萌えの塊です。
Q&A:気になる疑問解消コーナー
これから本作を読み始める方のための、気になる疑問解消コーナーです。
Q1: 原作小説やライトノベルはある?
A1: いいえ、完全オリジナルの漫画作品です。
本作はネブクロ先生によるオリジナルの漫画であり、小説やゲームのコミカライズではありません。漫画ならではのコマ割りやテンポ感が最大限に活かされています。
Q2: どんな人におすすめ?
A2: ホラー映画で「ツッコミを入れたくなる」タイプの方に最適!
「なんでそこで逃げないの?」とホラー映画を見て思ってしまう方には、薫の行動が痛快に映るでしょう。また、日常系コメディが好きな方や、ちょっと変わった「お仕事モノ」を読みたい方にもおすすめです。逆に、純粋な恐怖だけを求めている方は、笑いすぎて期待外れになるかもしれません 3。
Q3: 作者のネブクロ先生ってどんな人?
A3: SNSでのファンサービスも旺盛な実力派!
X(旧Twitter)では、作品の更新情報のほか、カミキリ様をはじめとするキャラクターのイラストや小ネタを頻繁に投稿されています。本編と合わせてチェックすることで、作品世界をより深く楽しむことができます。
Q4: 「バトル要素」はどれくらい本格的?
A4: ギャグ漫画の枠を超える迫力があります。
基本はコメディですが、スズが登場するエピソードや、マトリョーシカ(天災級の強さを持つ呪物)を巡る争いなどでは、手に汗握る攻防が描かれます。スズが使役する悪霊の圧倒的な力や、それに対抗する敵の不気味さは、王道バトル漫画ファンも納得のクオリティです。ギャグだと思って油断していると、不意に熱い展開に殴られるのが本作の醍醐味です。
さいごに
『訳アリ心霊マンション』は、ホラーというジャンルの「恐怖」を「笑い」と「資本主義」で解体した、極めて現代的なエンターテインメント作品です。
東雲薫というブレない主人公の存在は、不安の多い現代社会において、ある種の「救い」のようにさえ感じられます。幽霊が出ようが、呪われようが、「生きていくためには利用してやる」というそのバイタリティ。読んでいるだけで、不思議と元気が湧いてくるはずです。
そして、カミキリ様やスズといった魅力的すぎるキャラクターたち。彼らの「沼」にハマった時、あなたはもうこのマンションから退去できなくなっていることでしょう。
現在、Web漫画サイト「くらげバンチ」や「ピッコマ」などで配信中です。まずは第1話を読んで、その衝撃的な「内見」を体験してみてください。
幽霊付き物件、意外と悪くないかもしれませんよ?


